自身の魂という鏡を前にして、ヨーロッパの歴史が圧縮されたその極薄の深みで溺れ死ぬナルキッソスになる危 険を冒しながら、過去からの記憶の波動を伝える図像群の奔流に圧倒されることなく、「意識を完全に保った霊媒」の役割を果たすために、ヴァールブルクは図 像による地図帖(アトラス)としての自画像を描こうとする。それこそが、記憶の女神ムネモシュネの名を与えられた図像魔術の、秘儀にも似たプロジェクトで あった。