『イメージの自然史』──序と跋より - Blog (Before- & Afterimages)

『イメージの自然史』──序と跋より

「序」より──
 この書物は原型的イメージを探索した記録である。昆虫や植物の採集、あるいは化石の発掘にも譬えられるだろう。蝶を追うように、足早に逃れ去る少女の残像を追跡し、浪で磨かれ白骨に似た貝殻の面影を、記憶の岸辺で拾った。
 「自然史」とは「ナチュラルヒストリー」を意味している。だからそれは、「自然誌」「博物誌」「博物学」でもある。分類学的な博物誌と系統学的自然史のあわいを揺れ動きながら、原型的イメージを図鑑のように編み、それが変容してゆく過程を歴史のなかにたどった。

「跋」より──
 これらの断章を貫くテーマは「イメージの生命/生命のイメージ」であると言ってよい。この書物は生きた原型的イメージの変容過程をめぐって生物学や進化論に接近する一方で、人形やアニメーションを取り上げ、無機的な物体に生命を与えようとする欲望に迫っている。このようなイメージの生命/生命のイメージは、2001年刊行の著書『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』(青土社)でわたしが論じたヴァールブルクによるイメージ論の重要なモチーフだった。本書の出発点をなしているのは、こうしたヴァールブルクの発想や方法である。
 原型的なかたちで記憶に残存するイメージの生命/生命のイメージを論じた結果、この本は天使から貝殻まで、イメージに宿る生命のさまざまな形態を集めた、図鑑に似た書物になった。図鑑は実物を縮小・拡大して見せてくれる。巨大な動物が小さな画像になったかと思えば、極微の生物は逆に大きく眼に見えるようになる。子供が図鑑に熱中するのは、世界が変幻自在に伸び縮みして、自分でも所有できそうな大きさになる、この不思議に魅せられるからではなかろうか。本書にもそんな感覚がどこかに宿っているのかもしれぬ。いや、宿っていてほしいと思う。一書に編むうえでは、こうした世界模型としての図鑑にふさわしい分類と系統的な構成に配慮したつもりである。

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田中 純
東京大学大学院総合文化研究科・教授
TANAKA Jun, Ph.D.
Professor
The University of Tokyo

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