Blog (Before- & Afterimages): 2010年12月アーカイブ

2010年12月アーカイブ

「たいていの者には無気味に思われる塔内部での夕暮れ時と夜の静寂は、日増しに僕に、恐ろしい霊界とより高次の存在の輝かしい姿を確信させてくれる。この静寂が歳を取る
に連れて増しているとすれば、──そして僕には正しい暮らし方をしていればそれが可能に思えるのだが、外的な活動範囲の減少や制限はほとんど、ないし、まったく差し障りをもたない。それは旅と同じだ。全世界をめぐって旅する者がいる一方では、自分の住む地方を旅し、それによって多かれ少なかれ、何かが内面から生じて与えられるのに応じて、その何かを認識する者もいる。君自身も言っているよね。最大の発明はほんのわずかな道具から生み出されてきたのだし、いまだにそうやって生み出されており、すべては内面的な洞察次第であると。・・・あらゆる分野における絶え間ない転換やヨーロッパにおける政治的不安定は、僕らの事業で最近起きたのと同様の現象を呼び起こしている。遠くから観察していると、すべては流動状態にある。別の素材、別の名前と概念といったように。濁った水がいつどこで沈殿して澄むのかを誰も知らない。ひょっとしたら、人類は突如として再びいつか一瞬のうちに──古き大地に投げ返され、そこで再び文字をたどたどしく読み始めるのかもしれない。僕の洞窟のなかで自然はまた予期せぬときに鈍く轟き始めた。眼に見えないサムソンが支柱を壊し、聖書が述べているような意味で、僕は山と神殿が自分のうえに倒壊してくるのを見た。──今のところは冥界の門をしばらく閉ざしておこう。そのためには新しい力と手段が必要で、僕はまずそれらを蓄えなければならない。」
(アナカプリ、1925年12月31日)
«Die Abend- und Nachtstille im Turm, die den meisten ungeheuerlich erscheint, gibt mir immer mehr die Gewissheit ungeheurer Geistesweiten und Lichtgestalten höheren Daseins. Werden sich diese bei zunehmendem Alter steigern - und ich halte es bei richtiger Lebensart für möglich, so hat die Verminderung und Einschränkung des äusseren Aktivitätsradius wenig oder nichts zu sagen. Es verhält sich da wie mit dem Reisen. Einer fährt um die ganze Welt, ein anderer um seine Provinz und erkennt dadurch wenig oder viel, je nachdem es ihm von innen her gegeben ist. ... Die andauernde Umstellung auf allen Gebieten und die politische Unsicherheit in Europa ruft solche Erscheinungen wie die jüngsten in unserer Industrie hervor. Von Ferne betrachtet ist alles im Fliessen: ein anderer Stoff, andere Namen und Begriffe. Wie und wo sich das trübe Wasser setzen wird, weiss keiner. Vielleicht wird der Mensch plötzlich wieder einmal durch einen Ruck - auf die alte Scholle zurückgeschleudert, wo er dann wieder zu buchstabieren beginnt. In meiner Grotte begann die Natur auch unerwartet zu grollen, ein unsichtbarer Simson riss die Stützen nieder und in biblischem Sinne sah ich den Berg und Tempel über mir zusammenbrechen. -Jetzt schliesse ich die Tore der Unterwelt für einige Zeit. Es braucht dazu neue Kräfte und Mittel, die ich erst wieder sammeln muss ...»
(Anacapri, 31. Dezember 1925)
GILBERT CLAVEL 1883-1927. Sein Lebensgang in Briefen.
Harald Szeemann (Hg.): Visionäre Schweiz. Aarau: Sauerländer, 1991, S.282.
 
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The collapsed grotto of Torre di Fornillo. 2010.
Photo by TANAKA Jun

フランチスカ・シュテックリン「海」



おお、海よ、誰がお前を愛せるだろう、
恐れることなしに、
お前という恐怖の窮みと
熾天使のごとき耀きの魔界を!
なぜならお前の浪の躍動と
至福の動きは、
優しく戯れるように見えるときもなお、
魔力を秘めているのだから。

浪ざわめくセイレーンの島々、
ジルベール・クラヴェルの塔、
サラセン人に対するかつての防禦、
今やポジターノの真摯な見張り、
王者の威厳ある巌の住まい、
そして、千の階段のある町。
隠れた谷合ではいまだ、
このうえなく明るい緑と熟した無花果が驚きを与えるところ。

あなたたちは永遠の抱擁のなかで
海を感じている。
あなたたちは知っている、その千の愛と、
真っ青な絹の感触、
その強い憎しみを。
あなたたちは太陽が
夕暮れ時、満ち潮のなかに沈むのを見て、
こう悟るのだ、すべてはすでに
数千年前からこうであったと。

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Positano, 2010
Photo by TANAKA Jun

生命の渦

これも未掲載だった論考。
書誌情報は
田中純「生命の渦──武蔵野美術大学 美術館・図書館」、『藤本壮介 武蔵野美術大学 美術館・図書館』、INAX出版、2010年、16〜17頁。
英訳
Jun Tanaka, "Spiral of Life: The Musashino Art University Museum & Library." Trans. Alan Gleason. Sou Fujimoto: Musashino Art University Museum & Library. Tokyo: INAX Publishing, 2010, pp.18-19.

表象・身体・生理学

ブログに未掲載だった論考。備忘のため。
書誌情報は
田中純「表象・身体・生理学──ショーペンハウアーと19世紀の視覚経験」、『ショーペンハウアー研究』第15号、日本ショーペンハウアー協会、2010年、78〜100頁。


あなたは遠く、
わたしたちのまなざしを分つ隔たりを、
一日のうちに
橋渡しすることはできない。
わたしのあこがればかりが強くて、
わたしを向こう見ずにも
あなたのそばへと導いてゆく。
わたしはあなたを眼にする、
あなたの塔の孤独のなか、
十字なす丸天井の夕暮れの部屋に。
暗き祭儀を受ける小さな神のように、
あなたは玉座に座っている、
どっしりとした椅子の上に。
あなたの前には白い書物が開かれ、
そこにあなたは数と記号を刻み込む。
──夜が海から昇る、
恐怖と偉容とともに。
尖った三日月が、
浮かび上がる。
浪は重く
力強く、礎の崩れた巌に打ち寄せ、
その上にあなたの塔が、
持続の偶像のように聳える。
浪がどよめき、繰り返し打ち寄せる、
永遠に回帰しながら、巌へと。
あなたにとってそれはまるで、
巨大な心臓の鼓動のようだ。
そして時折あなたはぞっと怯える、
それがあまりに荒々しく、
猛り狂ったように脅かすときには。
──するとあなたは今度はそれを、
あなた自身の心臓の動悸のように感じるのだ。
海は重く
力強く、血のなかでどよめき、
あなたの子供のようなからだのか弱い力を、
途方もないものにまで高める。
あなたは神殿を建てたいと願う、
ピラミッドのように永続し、
あらたな神話を告げる神殿を。

R0012687.jpg  Gilbert Clavel

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Torre di Fornillo(クラヴェルが修復した塔)
Photo by TANAKA Jun, 2010.
Francisca [Franziska] Stoecklin
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Gilbert Clavel (Basic Info)

Wikipedia
Gilbert Clavel (* 29. Mai 1883 in Kleinhüningen; † 6. September 1927 in Basel) war in der frühen futuristischen Bewegung aktiv. Er widmete sich der bildenden und darstellenden Kunst sowie der Schriftstellerei. Ab 1919 liess er im süditalienischen Positano einen mehrere Jahrhunderte alten verfallenen Wachturm und den anschliessenden Felsen zu einem Gesamtkunstwerk umbauen, das Siegfried Kracauer 1925 in dem Text Felsenwahn in Positano beschrieb.

Gilbert Clavel (born May 29 1883 in Kleinhüningen; † September 6, 1927 in Basel) was active in the early futurist movement. He was devoted to the visual and performing arts, and writing. From 1919 in the southern Itaian city, Positano, he let convert a several centuries old, dilapidated guard tower and the adjoining rock to a total work of art that Siegfried Kracauer described in the text Cliff Folly in Positano in 1925.

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Gilbert Clavel

「冥府の建築」(QTmovie)

講義で用いたパワーポイント・スライドをQTムービーにしました(サイズ修正:8M)。クリックで進みます。

論文(PDF)公開・追記

先ほど公開したPDFについては、次の研究者情報サイトで、Scribdによるクイック・ビューが可能です。

Academia.edu


論文(PDF)公開

Gilbert Clavelについての論文と関連する小論をPDF書類で公開します。
利用条件:引用に際しては書誌情報を明記すること。

田中純「セイレーンの誘惑──南イタリア、神話の呪縛圏(1)」、『SITE ZERO/ZERO SITE』No.3、メディア・デザイン研究所、2010年、354-385頁。→Download (7.8M)
内容:1920-30年代ナポリ周辺におけるドイツ語圏知識人の活動を通して、この地の地霊(=土地の記憶)に根ざした神話論、イメージ論の生成過程を追究する。

田中純「摩滅の博物誌──W・G・ゼーバルトと古写真の光」、『UP』443号(2009年9月号)、東京大学出版会、2009年、36~41頁。→Download (1.9M)

田中純「「星の子供たち」の帰還──占星術の政治的図像学」、『UP』446号(2009年12月号)、東京大学出版会、2009年、34〜40頁。→Download (2.2M)

田中純「卵母セイレーン──誘惑する女たちの深層」、『UP』449号(2010年3月号)、東京大学出版会、2010年、40〜47頁。→Download (2.8M)

田中純「プルチネッラの倦怠──増殖する道化たちの歴史性」、『UP』452号(2010年6月号)、東京大学出版会、2010年、42〜48頁。→Download (2.5M)

田中純「閏の王たち──巨人と小人の無垢」、『UP』455号(2010年9月号)、東京大学出版会、2010年、45〜51頁。→Download (2.4M)

「三匹の子ブタ」異聞

『UP』12月号に寄稿しました。連載「イメージの記憶」の第22回です。
書誌情報は
田中純「「三匹の子ブタ」異聞」、『UP』458号(2010年12月号)、東京大学出版会、2010年、37〜43頁。
『建築雑誌』平城遷都1300年考特集に寄稿しました。書誌情報は
田中純「都市の持続的変容について──ローマと奈良」、『建築雑誌』vo.125, no.1611(2010年12月号)、日本建築学会、2010年、38〜39頁。
この特集、巻頭の平城京九相図が圧巻です。

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田中 純
東京大学大学院総合文化研究科・教授
TANAKA Jun, Ph.D.
Professor
The University of Tokyo

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