1996年度アーキテクチュア・オブ・ザ・イヤー


[企画の主旨]
建築関係5団体および毎日新聞社の共催による「アーキテクチャー・オブ・ザ・イヤー」展も今年で4年目を迎えます。建築と社会の関係を広く問いかけ、人々に建築に親しんでもらうことを第一の目標に掲げて、毎年さまざまなテーマを選んで内容のある展示を実施してまいりました。

昨年は木村俊彦氏をプロデューサーに迎え、建築と構造技術の関係をテーマにした「第六世代の技術」について広く問題提起を行いました。阪神大震災の後だったこともあって、この問題は、深く人々を印象づけ、多大の反響を呼びました。

さて、今年の「アーキテクチュア・オブ・ザ・イヤー」展も、現在準備が佳境に入っております。今年のプロデューサーに就いたのは、国際的に活躍する建築家、磯崎新氏、まさに現代日本を代表する建築家であり、氏の作品や論説がグローバルな建築状況を動かしております。この磯崎氏が掲げたテーマは「カメラ・オブスキュラ(註)で、要はこれまで建築史のなかに「記述されなかった」建築の歴史であり、昨年とはまた異なった切口で世界の建築状況を照らしだす展示となります。

このテーマは一見難解に見えますが、その意図するところは従来の建築史のなかで無視されてきた「国家を代表する威風堂々たる大建築」から「市井の無名の建築」までを新しい眼で眺めていこうというものです。モスクワの中心部にそびえるはずだった高さ400メートルの巨大なレーニン像や、早稲田大学OBの手になる北京の天安門広場と人民大会堂など、これまで知られていながらも無視されてきた建築のオリジナル・ドローイングや模型が出展されます。その意味では、この展覧会は、これまでになかったタイプの刺激的で「発見」の展覧会となるでしょう。今日の時点から、既成の価値観を覆し、歴史を発見する催し物なのです。

註:〈カメラ・オブスキュラ〉とは、ラテン語で〈暗い部屋、暗室〉の意味で、文字どおり密室の暗い部屋の壁に小さな穴を開け、ピンホール・カメラの原理を利用して、反対側の壁に外界の光景を映し出す仕掛けのこと。17〜18世紀のヨーロッパではこの仕掛けが流行し、哲学者デカルトや画家フェルメールなども利用した。


[タイトル]
「カメラ・オブスキュラあるいは革命の建築博物館」

[プロデューサー]
 磯崎新(建築家)

[会場]
メトロポリタンプラザ8F メットホール(豊島区西池袋1-11-1)

[日程]
1) 展覧会会期 

1996年11月20日(水)〜12月3日(火)
10:00〜20:00(ただし、20日は16:00まで)
2) サロントーク 1996年11月26日(火)

[主催]
社団法人 日本建築学会
社団法人 新日本建築家協会
社団法人 日本建築士会連合会
社団法人 日本建築士事務所協会連合会
社団法人 建築業協会
毎日新聞社


[展示の企画について]
今回の展覧会は、磯崎新プロデューサーの下に4名のキュレーターが指名され、プロデューサーとキュレーターとのやり取りのなかで展示が生み出されるという経緯をともなっています。展示の形式という面でも画期的なものですが、それに加えて、若手のキュレータ一たちの大胆な発想と、そこから導きだされるおびただしい「言説」のうずが、奇想天外な展示内容を導きだすことになります。

キュレーターは以下の4人です。
1)田中純(東京大学助教授)建築批評、音楽批評などに活動する若手の批評家
2)中谷礼仁(早稲田大学助手)日本の近世、近代に対して思想と建築の関係から考察する新進気鋭の建築史家
3)貝島桃代(東工大大学院生)都市の退屈な日常性に現代を嗅ぎとる気鋭の若手建簗家(在スイス)
4)松原弘典(東大大学院生)社会主義ソ連と中国の近代を研究する若手建築批評家(在ロシア)
このキュレーターに加えて、2名のデザイナーが入り、会場デザインとグラフィック・デザインを行います。
1)韓亜由美(デザイナー)土木デザインからプロダクトまでを輻広く手がける新進気鋭のデザイナー
2) 秋山 伸(グラフィック・デザイナー)コンピュータから建築への回路を考え、知のデザインを志向する若手デザイナー


[企画内容]
今画の展示は、近世、近代、現代と時間軸を経て今日に到る建築の世界的状況を、いくつかのトピックを設定しながらひとつの展示スペースに示すものです。具体的には、フランス革命に始まり、ロシア・中国と続く革命状況を建築学の政治性と関係づけてとらえていきます。展示作品は、建築の歴史をつくる上で間違いなく世界史的意味をもつものであり、今回初めて展示されるものも少なくありません。こうした作品を若手キュレーターたちが斬新な視点で再評価を加え、今日の建築と対比することになります。その成立事情そのものが、政治的意味合いからパラドクシカルであったわけですが、今これらの建築を一堂に会して眺めてみると、全く別の見え方がしてくるものです。同様に、展示方法そのものが、個別作品の紹介と全体の俯瞰の双方を行いうるよう考慮されており、見方によって建築の見え方が大きく異なることを実感をもって感じることが出来るようになっています。つまり、建築とは歴史的、社会的文脈によって、その意味するところがまったく違って受け止められるということが、今回の展覧会を通底する隠されたテーマとして示されているわけです。

展示構成(案)は、以下のようになっています。
1)近世近代の日本
武野紹鴎の四畳半茶室(インスタレーション)
近世の木割書(オリジナル・ドローイング)
明治の螺旋塔計画(復元模型)
伊東忠太の作品(オリジナル・ドローイング、模型、その他)
2)近世のヨーロッパ
ジャン・ジャック・ルクーの図面
エチエンヌ・ルイ・ブーレーの図面
フリーメーソンの図面(オリジナル・ドローイング)
3)近代の社会主義国家の建築
ソビエト宮殿のコンペ図面(オリジナル・ドローイング、模型)
ガモン・ガマンの図面(オリジナル・ドローイング)
ポソヒンの建築(オリジナル・ドローイング、模型)
天安門広場のコンペ図面(オリジナル・ドローイング、模型)
文化大革命の建築
4)現代の建築的状況
Made in Tokyoの建築的状況(インスタレーション
★磯崎新所蔵の書籍群

[カタログ]
上記の内容に対応した建築史の構図を、磯崎氏と若手論客の談論によって構成する。
発行:TOTO出版
体裁:B5版、320頁程度(予定)


Last modified: 16:39:26, Sunday, October 27, 1996

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