第1室 『幻視の器械〜フランス革命と建築』

出品作品;

 1. "recombinaison2 / Durand, jean-NicolAs-luis"
 2. "J.L.Q. jardin luxrieux de le queu (陰茎、あるいは花梗のある悦楽の園)"
 3. "J.L.Q. jardin lunatique pour le/la queux (料理長、あるいは砥石のため の月に憑かれた庭園)"
 4. "J.L.Q. Je Luis plus qu'eux dans le Q'eux. (彼らよりも輝いている私、 Qの中で...)"

 彷徨える二つの眼球。フランス革命期のパリで同時代を生きた二人、ジャン=ニコ ラ=ルイ・デュランとジャン=ジャック・ルクーは、新古典主義を超えて近代へと続 く二つの視線を生み出した。彼らの視線は時代の両眼であると同時に、互いに反転し た世界を見る孤独な器官でもあった。デュランはあらゆるものを一望する支配的欲望 の眼差しで建築から神話を剥奪し、ルクーは眼球の内的欲望によって生み出される神 話の発露として建築を描き出した。
 この二つの眼球、すなわち二様の幻視器械が二人の歴史的人物の枠を超えて現代に 生きる人々の意識の中にも依然としてあるということを、我々は自らの中に発見せざ るを得ないだろう。入り口を挟んで左右に配された『recombinaison2』と『J.L.Q.』 と呼ぶ「光り窓」は、二つの幻視器械を現代に再び召還するために用意した観測器な のである。大きな水平連続フレームが切り取る画面の中には、11行の偽テキスト・ データが割り付けられている。これらはデュランの『比較図集』に収められた11葉 のプレートを示しており、<デュランの公理>の一般化、あるいは遺伝子組み換え( recombinaison)によって再出力された『比較図集』である。一方『J.L.Q.』は垂直 フレームを持つ3つの箱である。100年後のパリで芸術を転倒することになる巨人 マルセル・デュシャンを触媒とすることによって、ルクーが好んで使用した署名<J. L.Q.>は「セックス/身体」、「フリーメーソン/ヘルメス主義的地下思想」「オリ エンタリズム/帝国主義的世界像」という時代意識への三様の読み換えが可能となる 。ルクーの建築は断片化されることによって最も饒舌に語り出す。3つの『J.L.Q.』 とは部分への解体、拡大、接合によってルクーをモンタージュするための箱庭である 。観賞者がルクーを経由して再びデュシャンに出会う契機となることを期待している。

五十嵐太郎
NOVEMBER(槻橋修+奈尾信英+福屋粧子)